ダズ鰐でお題、その3です。
【まるで子供みたいな】
お題の順番としては4つ目なんですが。
書いているうちに3つ目の「世の中そんなにうまくできてませんって」とはずれてしまったのでこっちに。
全く予定通りには進まないぜ(´ω`)そんな世の中。
また甘えたな鰐と、甘やかすダズ。
よろしければ、どうぞ。
【まるで子供みたいな】
お題の順番としては4つ目なんですが。
書いているうちに3つ目の「世の中そんなにうまくできてませんって」とはずれてしまったのでこっちに。
全く予定通りには進まないぜ(´ω`)そんな世の中。
また甘えたな鰐と、甘やかすダズ。
よろしければ、どうぞ。
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気圧が下がっている。雲の動きから、雨がじき降り出すのは確実だった。
雨季の時期はずらしたはずが、思いがけず早く乾季が終ってしまった。
これから先、当分の間滞在しているこの島はほぼ毎日が雨に変わる。
憂鬱だ。そして億劫だ。
なにもかも放り出して清潔なシーツに包まれてしまいたい。
偏頭痛は出るし、身体も重い。これでは頭もうまく働かない。
そもそも湿気が駄目だ。気温はさほど高くなくとも湿度が高い分、ひどく蒸す。
砂漠の国にいた頃は快適だった。
最低限の雨、それから渇いた空気、見渡す限りの砂、砂、砂。
自分が砂の能力を持っているからという理由だけではなく、あの場所は心地よかった。
夜になれば、一気に空気は冷える。キン、と刺す様な冷たさの中にただ佇むのもいい。
あの気温差が自分に似ていると、誰かが言っていた気がするが。
なるほど、言われてみればそうかもしれないとその時は笑った。
あの砂の国に未練があるわけではないけれど。
「ボス」
「…あァ…?」
「葉巻が」
目の前に差し出された灰皿が視界に入り、ようやく現実へと戻る。落ちた灰を見る分に、自分はかなりの時間を無駄に過ごしたらしい。折角の気に入りの葉巻のほとんどを味わうことなく、ただの灰にしてしまった。
それならいっそ、砂に変えてしまうほうがいくらかマシだったろうに。
「身体の調子が良くねぇようですが」
「別に…」
ぱたぱたと窓を打ち始めた雨粒に目を遣る。これは本格的に降りそうだ。スコールのような一時の雨ではない。じわじわと首を絞めるような、嫌な雨。きりきりとこめかみが痛んだ。
「…何か飲みますか」
主の様子を察したらしい部下が問う。ああ、まったく出来た男だ。戦いばかりかと思っていた男は思いのほか働きがいい。ただ、テーブルマナーだけは散々だった。今度、きちんと躾けてやらなければ。
「紅茶…」
「ミルクで?」
「あァ…」
「……」
男が漏らした小さな溜息は聞き流してやることにした。とにかく、何もかもが億劫なのだ。
男が戻った時、主はソファの肘掛けに頭を乗せてぼんやりと天井を見つめていた。
つい先日までは、なんともなかったはずが今日になって突然この調子だ。
思い当たることと言えば、今朝の新聞。
雨季の季節に入ったと小さな見出し。天気予報は先一週間全て傘のマークがついている。
雨が好きではないらしい、と気がついたのは共に行動をし始めてからだった。訪れた島は温暖で気候も安定しているが、雨が集中する時期がある。短くとも2ヵ月。長ければもっと。ぐずついた天気が続くのだ。
それを見越して、ここを仮宿にしたのだが今年の雨季はかなり早いらしい。
新聞を見ながら舌打ちをする姿を、そう言えば見たのだった。
「ボス」
「…ダズ」
「はい」
「…この雨、どうにかしろ」
「……」
やはり雨か。紅茶のカップをテーブルに置き主に近付く。白い、顔だ。いつも以上に色の薄い顔。
目の下に見える隈も今日は濃い。疲労も溜まっているのだろうか。昨晩は、少し無理をさせたように思う。
求められるのは嬉しいが、時々箍が外れたようになる主の姿は痛ましくも映る。
「おれは…神じゃあねぇんで」
天候を自由に扱える力はない。当然だが。
「…クハ…神ってツラか」
「紅茶が冷めます」
「雨音がうぜぇ…」
頭に響く。嫌な音だ。海の上にいた頃は、思いもしなかったというのに。ああ、耳を塞いでしまいたい。
「そうですか?おれは、嫌いな音じゃない」
「……」
「落ち着きますね、このくらいだったら」
「雨は嫌いだ」
「…はい」
「嫌いだ」
「知ってます」
「頭が痛ぇ…」
「薬は…」
「雨を、止めろ。出来ないなら出て行け」
無茶を言う。そう思っているだろう。だけれど、止まらない。全部雨が悪い。
「折角…ずらして来たって言うのに…クソ…」
「……」
悪態をついて手元にあったクッションに顔を埋めてしまった主に、戸惑う。こんな風にまるで子供のような。
「ボス」
だけど放っておけない。だから、と言うべきかもしれないが。
距離が縮まるたびに、そう思う。
「すぐに船の手配をします。ここからそう遠くない場所にもうひとつ島がある」
そこは、雨季がないという。同じ島の括りであるから、ログも必要ない。地図に従って進むだけ。
「多少…田舎になりますが。ここにいるよりは体調もマシでしょう」
情報を手に入れる分には、何も中央にいる必要はない。
「……」
しばしの沈黙のあと、クッションに埋もれていた顔が現れた。ちらり、と伺うようにこちらを見てくる姿はどこか幼さを感じさせる。一回りも年上の上司に使う言葉ではないかもしれないが。
海賊、と言う人種は誰でもそんな部分を持っているのだろう。
「濡れるのは御免だ」
また、小さな我が儘。
「港までは馬車でも使います」
小降りになった頃合を見計らって船を出せばいいのだ。
「…ダズ」
「はい」
「紅茶をくれ」
「ああ…はい、淹れ直します」
「急げ」
「はい」
少しだけ上がった口角と、あなたの機嫌が下がらないうちに。
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雨の時期に機嫌が悪くなる鰐はデフォですよね。
ちなみにイメージは日本の梅雨。
時期的にも丁度いいかなと。
所々に書きたい話を入れてみたりした。書けるかはわからないけどね^v^
ダズは殺し屋であって、海賊ではないと言う設定です。船の操作も素人だといいなと思う。
まあ、書けるうちに!!
2011/05/29 UP
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