*手*
無意識に伸ばした手が、指の長い大きな男の手に捕らわれる。両手で優しく包み込まれて安心するなんて、以前の自分では考えられなかったことだ。触れた部分から少しずつ男の体温が伝わってくる。冷えていますね、と呟きマッサージするように手の平や甲を揉まれ、更に冷たくなった指先も同じ様に撫で擦る。そんな事をしなくとも、ただその両手で触れているだけで十分に温かいのに。勿論、言葉にすることはない。男の体温がすっかり自分に馴染んでしまっている事実は、年甲斐もなくなんとも面映い気持ちにさせられる。それを知られるのが嫌で、目を伏せずっとその手を見つめていた。だから、男が浮かべた薄い笑みには気付くことが出来なかった。
彼の身体は、どこもひやりとして冷たい。汗もあまりかかない体質なのか、もしくは能力のせいか肌はさらりとして、だけれど触れればしっとりと手に馴染む。熱く吐き出される息も、抑えようとしてくぐもる声もおれを昂らせるには十分すぎた。身体を重ねた時、肩に触れた彼の指先が酷く冷えているのに気付き思わず両手でその手を包んだ。予想外だったのか、彼は目を見開き、それでも何も言わず抵抗もしなかった。形の良い指と綺麗に整えられた爪、今は外された指輪が彼にはとても似合う。海賊であるはずの彼の皮膚は蒼くきめ細かで、傷のひとつも見当たらなかった。彼が能力を得た時期は知らないが、それはもう随分前のことなのかもしれない。その肌に吸い付き、赤い跡を残す瞬間が一番興奮するのだと彼に告げたら、怒るだろうか。
それとも、多少なりと羞恥にその蜂蜜色の瞳を濡らしてもらえるだろうか。もし叶うとしたら、それはなんて甘美な事だろう。
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甘い感じのダズ鰐。ダズ視点。
触れ合うだけで幸せ。